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宇都宮LRTが需要をガッチリつかめた理由とは?

宇都宮市に移住して約3年が経ちました。LRTの開業前年から見守ってきましたが、事業が軌道に乗り注目度が大きくなっていると感じます。那覇市、和歌山市のLRT計画に続き、先日岐阜市でもLRT計画が持ち上がり話題となっています。

そこで今回は芳賀・宇都宮ライトレール線(以下「ライトライン」)がどのようなルート計画で、どういった層に利用されているのかできるだけ簡潔にまとめます。

目次

通勤客利用がメイン

ライトライン沿線には主に2つの工業団地があります。中間に位置する清原工業団地、終点の芳賀・高根沢工業団地です。

清原工業団地

清陵高校前~グリーンスタジアム前が清原工業団地に位置しています。キヤノン、カルビー、中外製薬など多数の工業団地があり、通勤利用客が多いです。

鬼怒川を超えるためにライトライン専用橋が架けられたため、市街地から清原工業団地に向かう際に車では大回りが必要なルートをショートカットできるようになりました。開業後は混雑時間帯でも宇都宮駅から30分かからずに清原工業団地に通勤可能となったのです。

芳賀・高根沢工業団地

本田技研工業の研究施設があります。2024年時点で従業員数は12,000人、派遣社員も含めると約20,000人が勤める大規模な施設です。終点と1つ前のかしの森公園前が本田技研工業の最寄りの停留所です。

周辺にコンビニもトイレも無いことに驚くと思います。それもそのはず。施設内にコンビニ、スタバ、1,000人以上が入れる社員食堂などがあるため周辺にコンビニ等は不要なのです。終点まで乗って料金は400円、約46分かかります。

2つの工業団地内の停留所を赤枠で囲んでいますが、距離・料金を考えるとライトラインの売上の半分は通勤客が支えています。開業前は各企業が自社で宇都宮駅発着のバスを出していましたが、これがLRT通勤に置き換わりました。

学生利用は通勤客ほどは多くない

東側沿線に学校はありますが、西側と比較すると実は多くありません。

一番恩恵を受けたのは宇都宮清陵高校でしょうか

清陵高は約580人の生徒のうち153人LRTを利用。同停留場から約3キロ離れた星の杜中高は213人のうち約70人が利用し、停留場から学校までは独自のバスが走る。

https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/805303

しかし、宇都宮清陵高校は2027年に全日制募集を終了し、定時制に移行することが決まっています。

工業団地への通勤客と比較すると学生利用は少ない。しかし、将来的に西側延伸すると作新、宇短附、文星などの大規模校が沿線に位置しており、この3校だけで生徒数は6,000人を超えます。

現在の学生利用も朝は宇都宮駅に向かう上り便に集中しており、工業団地通勤と逆方向への需要を生み出しています。

平石中央小学校

宇都宮市内で最も規模が小さい小学校の平石中央小学校。開業により学区外から5名がLRT通学をしているようです

休日の利用を支えるベルモール

宇都宮駅の東側にはベルモールという商業施設があります。市街地中心部にあるため、敷地面積こそ郊外モールほど広くはないですが、映画館や温泉などがあり家族連れを中心に休日は賑わっています。

今までも宇都宮駅からバスでアクセスできましたが、ライトライン開業により需要が一気に伸びました。バスより片道130円ほど安く、しかも本数も多いためLRT利用する人が増えました。

LRT開業後、同施設の来店客数、売り上げは共に1割アップした。(中略)「自社努力での1割増は相当大変。効果は想定以上だ」

https://www.shimotsuke.co.jp/articles/-/948774
下野新聞デジタル
LRTの経済効果、商業施設は「想定以上」 際立つ沿線地価上昇|下野新聞デジタル 猛暑が続く21日、次世代型路面電車(LRT)から降りた人々が、近隣の大型商業施設ベルモールへと歩いていく。夏休み中の中高生の姿も目立つ。 JR日光線とLRTを使い...

当初の需要予測を大きく上回り、休日でも現在は1日1万人超の方がLRTを利用しています。

LRT開業で地価高騰するゆいの杜

「ゆいの杜」は宇都宮市の最東端に位置する住宅街です。計画的に整備されているため、子育てをする若い世代向けに公園や小学校が整備されています。児童数が増加したため、令和3年に市内としては26年ぶりに小学校が新設されました。

東京新聞デジタル
ゆいの杜小学校が開校 宇都宮で26年ぶり:東京新聞デジタル 宇都宮市の清原地区に新設された市立ゆいの杜(もり)小学校の開校式が八日あった。学校の統廃合が相次いでいる中、市内での新設小学校は、田原...

宇都宮市中心部までは距離があるものの、ライトラインのおかげでベルモールにもアクセスしやすくなりました。直近3年間で地価が急上昇しており注目されている地域です。

2つの工業団地に挟まれている立地であり、工業団地へ勤務している方には便利なエリアとなります。ロードサイド店舗が充実しており、その中心をLRTが通る珍しい光景を見ることができます。

スポーツ観戦にも利用されている

ブレックスアリーナ

B1所属の宇都宮ブレックスの本拠地です。県外のファンも多く、LRT開業後は最寄り電停から徒歩6分程度でアクセスできるようになりました。

グリーンスタジアム

J3所属の栃木SCが時々利用しています。2027年にはラグビーリーグワンのホンダヒートの移転が決まりました。最寄りのグリーンスタジアム前電停から徒歩8分程度の距離のため、利便性が格段に上がりました。

トランジットセンター利用者が非常に多い

一部の電停には無料駐車場が併設されており、パーク&ライドができるように整備されています。

これが想定よりも多くの人に利用されていて、何度か拡張工事がされていますが平日は満車も珍しくありません。

清原地区市民センター前TCの様子

実際に使っている人の話を伺ってみると意外な点もありました。宇都宮駅西側の銀行・病院などに勤務する人が一定数利用していて、社員用の駐車場がなく一定の役職以上でなければ車通勤ができない企業もあるそうです。そういった人の一部はトランジットセンターを利用して通勤しているとのことでした。

おわりに

ライトラインの沿線にはどのような施設があるのか、簡単にまとめました。

利用者増加の原因については他にも理由があるのですが、ぜひ過去の当ブログ記事も併せて見ていただくと理解が深まると思います。今後、全国各地で様々な新交通システムが計画されることを楽しみにしています。

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この記事を書いた人

2022年に宇都宮市に移住。変わりゆく街の様子や地域のトピックを気の向くままに記事にまとめています。

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